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コンセプトEP『NV』のオフィシャルインタビュー公開!

どんな時代でも、いくつになっても、挑戦するあなたのそばで。

NAQT VANEは翼を広げる。

 

 “挑戦者に追い風を吹かせる”。そんな想いのもと、2022年に立ち上がったプロジェクトがNAQT VANE(ナクトベイン)。ドイツ語で“裸”を意味する「NAQT」、英語で“翼”を意味する「VANE」を名前にしたのは、自分の気持ちも個性も殺さずに、ありのままのあなたで、私で、世界を自由に飛び回れると信じているから

 

 様々な人気アニメ・ドラマ・映画の音楽を手掛け、自身のプロジェクト・SawanoHiroyuki[nZk]では岡野昭仁、西川貴教、SUGIZO、Aimerなど多数の豪華ボーカリストとコラボレーションを行う澤野弘之が、40代になってこのプロジェクトを始動させたことは“挑戦”だった。すでに音楽家として確固たる地位を築いている澤野が、「大人になると子どもの頃のデッカい夢や憧れを鼻で笑うようなところがある。でも年齢を重ねていくと、子どもの時に思っていたことほど重要なんだと僕は思う」と初心に立ち返り、「もっと多くの人に自分の音楽を聴いてもらいたい」という純粋な貪欲さと、まだ叶えきれてない夢を実現するために立ち上げたのが、NAQT VANEだ。

 

 ボーカルを担うのは、HarukazeとYunoa。Harukazeは、これまでも挑戦の道を大胆にも選択する人生を歩んできた。幼い頃より洋楽や洋画が好きだったことから、高校は単身でカナダに留学。その後LAの大学へ進学し、音楽ビジネスを専攻。日本に帰国後はレコード会社で業務を楽しんでいたこともあり、心の奥底にある「歌いたい」という気持ちには、「やりたくてもやれないことってあるよな、まあ仕方ないよな」と蓋をしていた。そんな蓋を開いたのが、澤野だった。プロのミュージシャンとして生きていくことの厳しさを十分理解しているものの、シンガーの道へと舵を切ったのは、Harukazeにとって何より“挑戦”だった

 Yunoaは、ソロアーティストとしての活動をスタートさせて、デビュー曲をリリースする直前のタイミングで澤野と出会った。子どもの頃の経験からグループでもの作りをすることには苦手意識があり、しかも澤野からはやったことのない「ラップ」も求められた。“挑戦”の気持ちでいざNAQT VANEの環境に飛び込んでみると、とにかく楽しさがすべての不安を打ち消した。いまやラップは、Yunoaの強い武器になっている。

 二人にとってNAQT VANEは、“ありのままの自分”を受け入れてくれる場であり、“自分がまだ知らない自分”を引き出してくれる場でもあるという。

 

 Harukazeの歌は陽、エネルギッシュさ、エッジを担い、Yunoaが陰、切なさ、ブルージーな匂いを曲に加えるため、ツインボーカル体制初のEP『NV』は、時に聴き手を力強く鼓舞し、心身が疲れた時には優しく癒してくれるような、挑戦する人の“すべての時間”に寄り添う作品に仕上がった。リード曲は、全員一致で“Ditty - NV”を選んだという。ループの構成や言葉のフレーズに遊び心がありながらも、二人の歌唱スキルがなければ成立しないもので、中毒性の高い一曲となっている。そもそもライブを意識して制作をスタートしたものだと澤野は言い、ライブでは、後半に行くつれてさらに解放な気持ちにさせてくれる爆発力を持つ。

 HarukazeはJ-POPにもハマるような、遠くにまで強く真っ直ぐと投げかけられる歌声を持ち、Yunoaはブラックミュージックを吸収したソウルフルな歌やラップを得意とする。澤野の音楽はすでに海外でも愛されている中で、この二人のボーカリストがいれば、さらに幅広い音楽を日本から世界中へ届けるための挑戦ができることを私は確信している。

 

 もう1つ、NAQT VANEの特徴はクリエイティブコレクティブ・Classic 6が参加しているという点で、ジャケットなどのグラフィックやミュージックビデオ、ライブ演出の一部などを手がけている。動画の影響力が強い時代であることは言うまでもないが、NAQT VANEのミュージックビデオはあえて“違和感”を残すという創作意図のもと、どれも「一度見ただけで記憶に残る、何度も見返したくなる」といった要素を含んだ映像作品になっている。一度覗くと引き摺り込まれるNAQT VANEの世界観に、世界中の人たちが巻き込まれていく日は、そう遠くないはずだ。


 挑戦は、怖い。選択肢が増えた時代と言えど、失敗できない空気や、非効率な努力が嘲笑われる風潮も感じる。それでも。NAQT VANEはメンバーそれぞれが挑戦する楽しさを体現し、挑戦することで新たな自分が見つかる喜びを伝え、どんな時代であっても、何歳になっても、挑戦するあなたを讃え続ける

【オフィシャルインタビュー】

――Yunoaさんが加入し、ツインボーカル体制の始動から1年が経ちました。NAQT VANEの名前が意味する「裸の翼=ありのままの自分で翼を広げる」ということや、NAQT VANEのテーマ「挑戦者に追い風を吹かせる」について、この1年の経験を通してどんな想いがありますか?
 
Harukaze:もともとレコード会社に勤めていて、そこからNAQT VANEになったこと自体が人生の中で大きな転機でした。曲を出すたびに挑戦があったので、この2、3年でボーカリストとして変化したと思います。やっぱり何も挑戦してない人が「挑戦してよ」って言うのは違うと思うから、私たちが先陣を切って挑戦しないといけないと思うんです。NAQT VANEの楽曲を聴いてもらって何かちょっとでも頑張ろうって思ってもらえたらいいなということを最初から言っていたんですけど、私たちが楽曲をリリースしたりパフォーマンスを見せたりするたびに、聴いてくれる人たちの中でも「挑戦」に対する熱い想いを膨らませてもらえているんじゃないかなと思っています。
 
澤野:今年で劇伴の作曲家として20年、SawanoHiroyuki[nZk]も10年が経ったんですけど、新しいことをやろうとするとまた0歳からのスタートになるので、NAQT VANEの活動は自分にとって刺激になっていますね。これまでやってきたことから音楽的にめちゃくちゃ変えようとしているわけではないんですけど、新しいボーカリストたちと新しいことをやれることで、それまで長く続けてきたものとはまた違ったテンションに繋げてもらえていることを感じます。
 
Yunoa:私は挑戦者としてここ(NAQT VANE)に入って。ラップは初めてだったので、もうガチ挑戦者(笑)。でもラップという新しい力を手に入れた実感があります。しかも私、もともと大人数で動くことが苦手で、中高のときも「みんなで協力して1枚の絵を描きましょう」みたいな授業で全然上手くいかなかったから、最初はみんなの意見を取り入れながら曲を作っていくことに「大丈夫かな?」と思っていたんですけど、NAQT VANEでやってみるとそれが楽しくて。「大人の前で、こんなに素を出せるときが来るんだ」とも思いました。最近はいろんなライブをやらせてもらって、「受験頑張ります」「明日から仕事頑張ります」などと言ってくださる人たちがいるので、ちゃんと追い風を吹かせられているんだなって感じています。
 
Harukaze:みんなで話していても、「Yunoaはそのままでいいんだよ、それがいいんだよ」って言ってるもんね。自分をさらけだして、自分の知らなかった面を知れるのがNAQT VANEだなと私も思います。人間、裸にならないとわからないところってあるじゃないですか。これはたとえですけど、裸になって「こんなところにホクロあるよ」って教えてもらう感じ。みんなが鏡を持ってきて、自分が見えてなかった背中のホクロを見せてくれる、みたいな(笑)。
 
Yunoa:わかる、「こんなところにホクロあったんだ」ってなる(笑)。
 
Harukaze:時代的にも、ありのままの姿をさらけ出しやすくなっているし、挑戦しやすくもなってきている気がして。いろんなことが可能になってきている時代だからこそ、こういったメッセージを届けていきたいなと思いますね。
 
――何かを夢見たときに、それを実現するための情報や手段にアクセスしやすくなった時代だと思いますし、生き方の選択肢も多様になっている一方で、アツく頑張っている人を嘲笑う風潮も一部ではある気がして。
 
澤野:でもそれって、きっと見えやすくなっただけであって。みんな大人になっていくと、子どもの頃のデッカい夢や憧れを、ちょっと鼻で笑うようなところがあるじゃないですか。そういうことは昔からあったよなと思います。でも年齢を重ねていくと、結局子どものときに思っていたことほど重要なんだなと僕は普段から思ったりもするので。音楽を始めるきっかけになったASKAさんや、劇伴だったら坂本龍一さん、久石譲さん、菅野よう子さんを見ていると、自分の立場は本当にまだまだだなって思い知らされることばかりなんですよね。「この人は40歳のときにこういうことをやっていたんだな」「自分はそこまでのことができてないな」と思ったり。何かしらのコンテンツと一緒に音楽が届いて、多くの人に聴かれているものもあるにはあるんですけど……いや、まだまだだなって思い知らされることがほとんどなんですよね。もちろん、先ほど挙げた方々とは違う場所を目指して進まなければならないので比べる必要はないんですけど。作ったものに必ずしも自分の思い通りの反応が起きるわけではないし、もっと多くの人に聴いてもらいたいという気持ちが湧いて、それが次の創作や活動へのエネルギーになっていく。その繰り返しな感じがします。
 
Yunoa:私は、笑われることもあるし、「できるわけねえだろ」みたいに言われることも全然ありますけど、「あちらは笑ってきているけど、こちらの方が笑えてるから」と思ってます。
 
――かっこよすぎる言葉だ! ツインボーカル体制初のEP『NV』を制作する中で、澤野さんは、2人の歌や声の特徴の違いをどのように捉えていましたか?
 
澤野:ざっくり言っちゃうと、Harukazeはエッジが立っていてカーンとくる声。勢いのある感じ。もちろんそれだけの表現ではないんですけど、そういった部分も出せるかっこよさを持っているなと思います。Yunoaは、声だけでちょっと謎めいている感じを出せる。ちょっと切なくも聴こえるし。NAQT VANEでやっている曲は、Yunoaのソロアーティストとしての曲よりもテンションが少し高めというか、リズムが立っていたりするので、ソロとは違うアプローチをしてくれているなと思います。
 
――『NV』にはYunoaさん、Harukazeさんのソロ歌唱曲も収録されています。それぞれ自分の曲をどんなふうに捉えていますか?
 
Yunoa:“C”は、「ありのままでいてほしい」という意味の歌詞がたくさん入っているんですけど、無理にありのままでいてほしいとは言ってなくて、それがすごく腑に落ちました。「私の曲だ」ってすごく感じられる曲です。最近、みんなが言う「ありのまま」のレベルが上がってきているような気がして。でも私が言いたいのは「本当に素のあなたでいてほしい」ということだから。いつも押し付けたくはないなと思っていて、この歌詞もサウンドも押し付けてない感じがしていいなと思っています。
 
Harukaze:どちらも私たちの個性やキャラクター、お互いのよさが引き出された作品を澤野さんが書き下ろしてくださっているなと思う中で、“C”が「どういう形でもいいんだよ」ということを言っているのだとしたら、“O”は「とにかく私がエネルギーを供給するから、必要だったら持っていって」みたいな曲なんですよ。それも押し付けてはいなくて、とりあえずこの曲で生きる活力とか考える力を渡しておくけど、それをどう使うのか、もしくは貯めておくのか、何でもいいよって。「今はいらない」というときもあるかもしれないけど、私はいつでもみんなにエネルギーを供給できる準備ができているよ、というメッセージがある曲だなと思います。だから“O”と“C”は、共通している部分もあるんですけど、メッセージの伝え方は対になっているなって。これもまた澤野さんが「こういうふうに(Harukazeのことが)見えているよ」って映し出してくれて、自分の知らなかったことを出させてくれた曲ですね。曲ごとに自分の声色をちょっと変えてみたり、色々チャレンジしているんですけど、一番素の声が出ている曲はこれかもしれないです。
 
――“Ditty - NV”を『NV』のリード曲に決めた理由は?
 
Yunoa:みんなで「“Ditty”が一番いいよね」っていう話をして。私、この曲がNVバージョンの中で一番好きなんですよ。
 
Harukaze:みんな好きなんです(笑)。3人とも「“Ditty - NV”がいい」という意見で一致しました。もともと遊び心のある曲で、《Tick it per DAT Hop》も別に意味はなくて呪文のように唱えている感じなんですけど、そこにYunoaのラップが入ったことでもっと遊べる曲になったと思います。私、この曲のYunoaのラップパートがめっちゃ好きなんです。ライブでも、どこまでも遊びを追求できる曲ですね。《NAQT VANE》という言葉も歌詞に入っているので、遊び心があるかっこいいアンセム曲になったなと思います。
 
澤野:もともとライブでお客さんと掛け合いとかができて、リラックスしてやれるような曲を作りたいなと思って。Yunoaに入ってもらったことによって、NVバージョンはよりライブ感を出すことができましたね。
 
――“TOUCH -NV”は、Yunoaさんが加わってどのように変わったと感じていますか?
 
Harukaze:これは失恋がテーマになっているんですけど、失恋してもいろんな感情があるじゃないですか。「苦しいよ」「全然忘れられないよ」みたいな部分を私が担当して、冷静になる気持ちをYunoaが表現しているなと思っていて、そのコントラストによって、1人で歌っているときよりも2人のほうがメッセージが伝わりやすいなと思っています。
 
澤野:特にAメロ、Bメロのコントラストが、Harukaze1人のときとはまた違った表現ができたかなと思います。サビは交互に歌っているんですけど、どこか通ずる瞬間もあって、共存と別れのバランスをサウンド面で上手く出せたのかなと思っています。2人のキャラクターが違うことによって、受け手側の人たちもHarukazeが歌ってたらHarukazeのキャラクターと照らし合わせて聴こえるだろうし、Yunoaが歌うとYunoaのキャラクターで言葉が聴こえるだろうから、意味合いが違って聴こえるようになるのが面白いかなっていう気はしますね。
 
――Harukazeさんは引っ張ってくれる感じ、Yunoaさんはブルーな気持ちに寄り添って「頑張れない日があっても大丈夫だよ」と言ってくれる感じがあって、その調和が心地いいし、どんな感情の日にも聴きたくなる音楽がNAQT VANEだなと思います。全曲歌詞はBenjaminさんとcAnON.さんによるものですが、澤野さんが歌詞において一番こだわっているポイントはどういうところですか?
 
澤野:僕、歌詞を初めて確認するときに内容はほとんど見てないんですよ。響きだけを重視しています。日本人が歌詞を重要視していることはものすごくわかっているんですけど、僕は作曲家だということもあって、メロディに対してどういう言葉の響きをあててくれているかを大事にしています。そこに関しては、作詞家と「もうちょっと他の候補を出してくれ」といったやり取りをしますね。基本的に自分が曲を作っているときは日本語よりも英語の歌詞をイメージしているところがあるので、日本語を入れるにしても、日本語としてはっきり発音するよりは、英語っぽく聴こえちゃってもいいからリズムを優先して歌詞を書いてもらっています。YunoaもHarukazeも、英語も日本語も自分の思っている以上にいい形で表現してくれるボーカリストなので、それが最終的に海外の人たちにも「いいな」と思ってもらえたら、という気持ちはありますね。


――EP『NV』のCDは「可変ジャケット」ですが、これはどういうものですか?
 
Harukaze:大きい絵からランダムに1か所を切り出してカードになっています。だから1枚1枚絵柄が違って、同じものがないんですよ。歌詞のキーワードがデザインに組み込まれていて、切り出されたカードによって見えるキーワードが違うので、「この曲の歌詞がほしい」という人は探したくなるかも。色々集めたくなりますよね。封入特典のパズルピースは、実際に6,000ピースのパズルを作って、そこから1枚ずつ封入しています。全員が集まれば1枚の絵が完成する仕組みになっているので、いつかどこかで集まりたいよねって話してました(笑)。
 
――最後に、今のみなさんの夢、挑戦したいことを聞かせていただけますか?
 
澤野:このプロジェクトにより興味を持ってもらいたいですね。音楽を聴いてもらって、それに付随していつかたくさんの人の前で演奏できるように、これからもっと広げていけたらなと。まずそこが向かわなきゃいけないところかなと思っていますね。


Yunoa:もっとみんなに会いたいです。それが一番デカいかも。


Harukaze:このEPをきっかけに知ってくれる人もいると思うんですけど、NAQT VANEの魅力が最大限伝わるように、いろんな面で工夫しながら挑戦し続ければなと思っています。
 
インタビュー・テキスト:矢島由佳子
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